『南部軍〜愛と幻想のパルチザン〜』

中川敬(ミュージシャン/ソウル・フラワー・ユニオン)

朝鮮戦争下の山岳パルチザンを描いた、生の根源を問う行軍悲話。

遊撃兵イ・テの実話を元に、休戦協定で北に正規軍と認められずに捨て置かれた南部軍の、惨苦に満ちた雑多な一人ひとりの人間模様 を描く。

現在の枠組から除かれた朝鮮人の悲劇の象徴「南部軍」の物語は、「分断」が強調される今こそ必見。

「隊長。僕らが苦労した分、いい世の中になるよね?」

「ああ。いい世の中になるさ」

 
 
 

『南営洞1985〜国家暴力:22日間の記録〜』

海渡雄一(弁護士・監獄人権センター代表・秘密保護法廃止へ!実行委員会)

 拷問は肉体を痛めつけるだけでなく人間の精神を破壊する。口笛を吹きながら水責め、電気ショックなどの凄惨な拷問を繰り返す拷問技師イ・ドゥハンは、それを「工事」と呼ぶ。人間の精神を改造する「工事」という意味だろう。キム・グンテ氏のような不屈の精神を持った者も、これには抗えない。先輩たちの名前を黒幕として自白し、良心の呵責にさいなまれる。
 この物語は、わずか20年前に隣の国で起きたことだ。その韓国が、いまや取調を可視化し、弁護人の取調への立会を実現した。翻って、日本ではウソの自白によるえん罪はなくならず、刑事司法改革は遅々として進まない。それどころか治安維持法を彷彿とさせる秘密保護法が制定された。秘密保護法違反の逮捕者が出たとき、このような拷問を起こさない制度がわが国には備わっているだろうか。拷問は我々にとっても過去の問題ではない。