『南部軍〜愛と幻想のパルチザン〜』

 

 朝鮮戦争の前後に、韓国南部の智異山を拠点に韓国軍に抵抗したパルチザン=南部軍を描く、ヒューマニズムあふれる戦争映画。大韓民国の建国に反対した彼らは「共匪」と呼ばれ、長らく歴史上のタブーとされてきた。そんなタブーに果敢に挑み、興行的にも成功した本作は、まさに歴史的大作と呼ぶにふさわしい。3年の製作期間を投じて映像に収められた、雄大かつ峻烈な智異山の景色も見どころである。


1950年6月に勃発した朝鮮戦争は、米軍の仁川上陸作戦で戦況が一変。南下していた朝鮮人民軍は敗走を余儀なくされる。全州で新聞記者をしていたイ・テ(アン・ソンギ)は、南部の山岳地帯に潜伏して韓国軍に対しゲリラ戦を展開する「パルチザン部隊」に編入される。祖国分断の悲劇が現実のものとなる中、それに抗する勝算なき戦い。看護兵パク・ミンジャ(チェ・ジンシル)との出会いと別れ。寒さと飢えの極限状態で、死を覚悟したイ・テの目に映ったものとは…。

 主人公イ・テを演じる安聖基は、80年代からトップ俳優として「鯨とり」(84年)、「太白山脈」(94年)、「シルミド」(03年)など、数々の名作に出演している。2011年には鄭智泳監督と三度タッグを組み、「折れた矢」をスマッシュヒットさせた。看護兵パク・ミンジャを演じる崔真実は、「私は願う。私に禁じられたことを」(94年)、「ゴースト・ママ」(96年)などテレビや映画で活躍、絶大な人気を誇っていたが、2008年に自殺。本作は彼女の映画デビュー作でもある。文学青年キム・ヨンを演じる崔民秀は、今ではワイルドなイメージが定着しているが、本作では一転、繊細な役柄を演じている。「インシャラ」(96年)「リベラ・メ」(03年)など出演作多数。また、歌手・俳優として活躍する任昌丁(イム・チャンジョン)が少年兵役で出演している。